各形状のコンダクタンス計算式
円管、環状管、矩形ダクトなどの計算式と適用条件の解説
各形状のコンダクタンス計算式
異なる形状の配管やダクトでは、異なるコンダクタンス計算式が使用されます。この記事では計算ツールに実装されている式の体系を、適用条件とあわせて整理します。
層流(粘性流)— Kn < 0.01
層流領域では、流体力学の古典式(Hagen-Poiseuille 系)が適用されます。共通する特徴はコンダクタンスが平均圧力 に比例することです。
円管
ここで:
- :管の内径、:管の長さ
- :平均圧力
- :気体の粘性係数 [Pa·s](ガス物性の記事参照)
直径の4乗に比例する点が重要です。粗引き配管の径を半分にすると、流れやすさは 1/16 になります。
適用条件:層流(Re < 2000)かつ十分長い管。式が でなく を含むのは、気体が圧縮性流体だからです。
その他の断面
層流では、楕円・正方形・長方形・正三角形断面、狭いスリット、リングスリット(半径方向流れ)などに対して、それぞれ断面形状に応じた係数を持つ式が知られています。長方形断面ではアスペクト比に依存する補正係数 K が入ります(計算ツールでは自動推定またはマニュアル入力が可能です)。
分子流(Knudsen)— Kn > 10
分子流領域では、分子と壁の衝突だけが流れを決めます。コンダクタンスは圧力に依存せず、ガスの平均熱速度 に比例します。
円管(長管)
N₂・室温の実用形では [L/s](d, l は cm)。層流の と違い、 に比例します。
短い管の扱い
上式は長い管(l/d ≳ 10)の近似です。短い管では入口開口の抵抗が無視できないため、開口のコンダクタンス(コンダクタンスとは参照)と管部分を直列合成した形で評価します。l/d = 1 程度の短管では、長管式だけで計算すると数倍の過大評価になることもあります。
環状管(同心・偏心)
外径 ・内径 の環状断面では、基準式に補正係数を掛けます:
補正係数は径比 と偏心量によって変わり、偏心するほどコンダクタンスは増加します。設計上の注意点は環状管・矩形ダクトの記事を参照してください。
矩形ダクト・その他
長方形断面では辺長比に依存する補正係数 K が入ります。同じ断面積なら正方形が最も流れやすく、扁平になるほど不利です。このほかテーパー円管、楕円・正三角形断面、狭いスリットなどの式が整備されています。
Smoluchowski の分子流モデル
Knudsen の式と並んで、Smoluchowski による分子流の理論式の体系があります。円管・楕円断面・同心円環管・長方形断面・スリットなどに対して式が与えられており、形状によっては Knudsen 系の式と数%〜数十%の差が出ます。計算ツールでは両モデルを切り替えて比較できるので、境界的な形状では両方で計算して差を把握しておくと安心です。
中間流(遷移流)はどう扱うか
0.01 < Kn < 10 の中間流には厳密な解析解がなく、実務では Knudsen の補間式(層流成分と分子流成分を圧力の関数で滑らかにつなぐ形)が広く使われます。おおまかには:
(Z は圧力に依存する 0.8〜1 程度の係数)
一次評価としては「層流式と分子流式の両方で計算し、大きい方を採用する」だけでも大きくは外しません。中間流のコンダクタンスは常にこの2つの間に収まるからです。
式の選び方まとめ
- 使用圧力域からクヌッセン数を計算し、流域を判定する(流れの種類)
- 形状に対応する式を選ぶ(円管 / 環状管 / 矩形…)
- 分子流なら短管補正の要否(l/d)を確認する
- ガス種・温度の物性を設定する(ガス物性)
計算ツールでは、モデル(層流 / Knudsen 分子流 / Smoluchowski 分子流)と形状を選択すると、対応する式・出典・形状図が表示され、入力値から自動的に計算されます。具体的な数値の感覚は計算例の記事でつかんでください。