環状管・矩形ダクトの設計ポイント

円管以外の断面形状を扱うときの考え方と落とし穴

環状管・矩形ダクトの設計ポイント

実際の装置では、円管以外の流路がしばしば現れます。同軸構造の隙間(環状管)、角ダクト、スリット状の隙間などです。この記事では非円形断面を扱うときの考え方と、よくある誤りを解説します。

環状管(アニュラス)

外管(内径 d2d_2)と内管(外径 d1d_1)の間の環状隙間を気体が流れる構造です。典型例:

  • クライオスタットの輻射シールドと内槽の隙間
  • 同軸ケーブル導入部・差動排気部
  • 二重管式のガス導入ライン

分子流の環状管コンダクタンスは、基準となるコンダクタンス C0C_0 に補正係数 KK を掛けた形で表されます:

C=C0×K(e,b)C = C_0 \times K(e, b)

ここで:

  • b=d1/d2b = d_1 / d_2:内外径比。隙間がどれだけ狭いかを表す
  • ee:偏心量。内管が中心からどれだけずれているか

重要な性質として、同じ断面積でも偏心すると(内管が片側に寄ると)コンダクタンスは増加します。隙間が広い側に流れが集中するためです。差動排気などで「隙間のコンダクタンスを最小にしたい」場合は、同心度の管理が性能に直結します。

矩形ダクト

aa、高さ bb の矩形断面ダクトは、ビームライン、装置間の接続ダクトなどで使われます。

分子流の矩形ダクトでは、同じ断面積でもアスペクト比が大きい(扁平な)ほどコンダクタンスは小さくなります。分子が壁に衝突する頻度が上がるためです。正方形断面が矩形の中では最も効率が良く、極端なスリット形状では大幅に低下します。

等価直径の落とし穴

粘性流の配管計算で使われる水力直径(hydraulic diameter):

dh=4AU=2aba+bd_h = \frac{4A}{U} = \frac{2ab}{a+b}

(A:断面積、U:周長)を分子流にそのまま流用すると、扁平な断面では実際より大きなコンダクタンスを見積もってしまいます。分子流では専用の形状係数を含む式を使うべきです。計算ツールの矩形ダクトモードはこれを正しく扱います。

設計のポイント

  1. 環状隙間は「狭い×長い」の複合ペナルティ — 隙間 (d2d1)(d_2 - d_1) が小さいほど、また長いほど急激にコンダクタンスが落ちます。意図的に絞る(差動排気)にも、避けたい(排気経路)にも、まず数値を出すこと
  2. 矩形は正方形に近づける — 断面積が同じなら、アスペクト比 1 に近いほど有利
  3. 円管に換算しない — 「だいたい同じ面積の円管」で代用した概算は、分子流では系統的に外れます
  4. 偏心・公差も設計変数 — 環状管では組立公差がコンダクタンスの実力値を左右します

計算ツールでは円管・環状管・矩形ダクトの各形状に対して、粘性流・分子流それぞれの専用式で計算できます。