計算例で学ぶコンダクタンス(実践編)
手計算とツールを使った具体的な計算ウォークスルー
計算例で学ぶコンダクタンス(実践編)
理論式を知っていても、実際の数値感覚がないと設計判断はできません。この記事では代表的な 3 つの計算例を通して、計算ツールの使い方と数値感覚を身につけます。
例1:分子流の円管を手計算する
問題: 内径 50 mm、長さ 500 mm の円管。ガスは N₂、温度 20℃、分子流領域。コンダクタンスは?
分子流の長い円管のコンダクタンスは:
ここで は分子の平均熱速度:
N₂(M = 28.01 g/mol)、T = 293 K では m/s。代入すると:
実用式 (d, L は cm)でも L/s となり、一致します。
注意: この式は「長い管」(L/d ≳ 10 程度)の近似です。短い管では入口開口の抵抗が無視できず、実際のコンダクタンスはこれより小さくなります。計算ツールは開口補正を含めて計算するため、短い管でも正しい値が得られます。
例2:ガス種でどれだけ変わるか
分子流のコンダクタンスは分子量 M に依存します:
同じ φ50mm × 500mm の管を、ガスだけ変えて比較すると:
| ガス | 分子量 M | N₂ 比 |
|---|---|---|
| H₂ | 2.02 | 約 3.7 倍 |
| He | 4.00 | 約 2.6 倍 |
| N₂ | 28.01 | 1(基準) |
| Ar | 39.95 | 約 0.84 倍 |
| SF₆ | 146.06 | 約 0.44 倍 |
軽いガスほど速く流れます。He リークテストで He が使われる理由の一つはこの「流れやすさ」です。逆に SF₆ のような重いガスを扱うプロセスでは、同じ配管でも排気に時間がかかることを見込む必要があります。
例3:圧力領域をまたぐと挙動が変わる
同じ配管でも、圧力によって流れの種類(気体の流れの種類参照)が変わり、コンダクタンスが大きく変化します。
- 粘性流領域(例:大気圧〜数百 Pa): コンダクタンスは平均圧力 に比例して増加します。圧力が高いほど流れやすい
- 分子流領域(例:0.1 Pa 以下): コンダクタンスは圧力に依存しない一定値になります
- 中間流領域: 両者をつなぐ遷移領域で、Knudsen の補間式などが使われます
つまり粗引き中(粘性流)は配管が「太く見え」、高真空(分子流)では同じ配管が「細く見え」ます。配管設計は必ず分子流(最も厳しい条件)で評価するのが基本です。
計算ツールでの検証手順
- 形状(円管)とモデル(分子流)を選択
- 寸法(d = 50 mm、L = 500 mm)とガス(N₂)、温度(20℃)を入力
- 計算実行 — 手計算と比較する
- ガスを He や SF₆ に切り替えて、√(T/M) 依存を確認する
- モデルを粘性流に切り替え、平均圧力を変えて挙動の違いを確認する
手計算で桁と傾向を押さえ、正確な値はツールで求める——この使い分けが実務的です。