コンダクタンスとは

コンダクタンスとスループットの定義、直列・並列合成、オリフィスの計算例

コンダクタンスとは

コンダクタンスは、真空配管におけるガスの流れやすさを表す指標です。電気回路にたとえると、圧力差が電圧、ガス流量が電流、コンダクタンスがコンダクタンス(抵抗の逆数)に対応します。

スループット(ガス流量)

先に流量の定義を押さえます。真空工学では、ガス流量をスループット Q で表します:

Q=PdVdtQ = P \cdot \frac{dV}{dt}

単位は Pa·m³/s(= W と同じ次元)。「その圧力で毎秒何 m³ 分の気体が流れるか」を圧力×体積流量で表したものです。スループットは同じ配管のどの断面でも一定(定常状態)で、リークレートやアウトガス量も同じ単位で表せるため、排気系全体を一つの収支式で扱えます。

コンダクタンスの定義

配管の両端の圧力を P1P_1(上流)、P2P_2(下流)とすると、コンダクタンス C は:

C=QP1P2C = \frac{Q}{P_1 - P_2}

単位は m³/s(実務では L/s も多用。1 m³/s = 1000 L/s)。「単位圧力差あたり、どれだけの流量が流れるか」を表します。

重要な性質:

  • 分子流では C は配管の形状とガス種・温度だけで決まる定数(圧力に依存しない)
  • 粘性流では C は平均圧力に比例して変わる(圧力が高いほど流れやすい)

流域の判定は気体の流れの種類を参照してください。

最も基本的な要素:オリフィス(開口)

薄い壁に開いた面積 A の穴のコンダクタンス(分子流)は:

Corifice=vˉ4AC_{orifice} = \frac{\bar{v}}{4} A

vˉ\bar{v} は分子の平均熱速度です。N₂・室温では vˉ/4118\bar{v}/4 \approx 118 m/s なので、開口 1 cm² あたり約 11.8 L/s という便利な目安が得られます。

計算例: 内径 50 mm の開口(A ≈ 19.6 cm²)なら C ≈ 11.8 × 19.6 ≈ 230 L/s

これはどんな配管も超えられない上限です。φ50 の配管をいくら短くしても、N₂ に対して 230 L/s を超えるコンダクタンスにはなりません。ゲートバルブの口径がチャンバーの排気能力を根本的に制限するのはこのためです。

直列合成

複数の配管要素が直列に接続されている場合:

1Ctotal=1C1+1C2++1Cn\frac{1}{C_{total}} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \cdots + \frac{1}{C_n}

抵抗の直列合成と同じで、最も小さい C(最も細い・長い要素)が全体を支配します。

注意: この合成則は各要素の間で分子の向きがランダム化されること(大きな容積を挟むこと)を仮定しています。短い管を直接つなぐ場合、分子が方向性を保ったまま通過する「ビーミング効果」により、単純合成は実際よりコンダクタンスを小さく(保守的に)見積もります。精密な評価にはモンテカルロ計算が使われますが、設計の一次評価では単純合成で十分です。

並列合成

複数の配管が並列に接続されている場合は単純な和になります:

Ctotal=C1+C2++CnC_{total} = C_1 + C_2 + \cdots + C_n

排気経路を2系統にすればコンダクタンスは2倍になります。

排気系設計への応用

コンダクタンスの最大の使いどころは、ポンプの排気速度 S と組み合わせた実効排気速度の評価です:

1Seff=1S+1C\frac{1}{S_{eff}} = \frac{1}{S} + \frac{1}{C}

配管が細いとポンプの能力がほとんど活かせません。詳しくは実効排気速度と配管設計の基本で、具体的な数値例は計算例で学ぶコンダクタンスで解説しています。

計算ツールを使用すると、円管、環状管、矩形ダクトなど様々な形状のコンダクタンスを計算できます。