到達圧力を決めるもの — リークとアウトガス
ガス負荷の考え方、アウトガスレート、Heリークテストの基礎
到達圧力を決めるもの — リークとアウトガス
ポンプを回し続けても圧力が下がりきらないとき、装置の中では排気とガス発生が釣り合っています。到達圧力は次の単純な式で決まります:
- :全ガス負荷 [Pa·m³/s]
- :チャンバーから見た実効排気速度 [m³/s]
到達圧力を 1 桁下げるには、「排気速度を 10 倍にする」か「ガス負荷を 1/10 にする」しかありません。そして高真空以下では、たいていガス負荷を減らすほうが効果的です。
ガス負荷の内訳
- リーク(): シール不良、溶接欠陥、傷などによる実漏れ
- アウトガス(): 材料表面からの放出ガス。高真空〜UHVでの支配要因。大半は表面に吸着した水
- 透過(): O リングなどを透過してくるガス(例:Viton を透過する He・空気成分)
- プロセスガス(): 意図的に導入するガス
アウトガスレートの目安
アウトガスは単位表面積あたりの放出速度 [Pa·m³/(s·m²)] で評価し、(A:表面積)で見積もります。
| 材料・状態 | q の目安 [Pa·m³/(s·m²)] |
|---|---|
| ステンレス(未ベーク、排気1時間後) | 10⁻⁵ 〜 10⁻⁴ |
| ステンレス(未ベーク、排気10時間後) | 10⁻⁶ 前後 |
| ステンレス(150〜250℃ベーク後) | 10⁻⁹ 〜 10⁻⁸ |
| アルミ(表面処理+ベーク後) | 10⁻⁹ 台 |
| Viton(ベーク後) | 10⁻⁷ 前後 |
(値は文献・表面状態によって 1〜2 桁変わります。オーダーの目安としてください)
未ベークのアウトガスはおおむね時間に反比例()して減っていきます。「一晩引けば 1 桁下がる」という現場感覚はこれに対応します。ベーキングが UHV 到達の決定打になるのは、吸着水を強制的に追い出せるからです。
排気曲線の読み方
大気圧からの排気は 3 つのフェーズに分かれます:
- 体積排気: チャンバー内の気体そのものを排気。指数関数的に圧力低下()
- アウトガス律速: 表面からの放出ガスと排気が釣り合いながらゆっくり低下( に近い)
- リーク・透過律速: 一定圧力で頭打ち
「圧力が頭打ちで、時間が経っても全く下がらない」ならリークを疑い、「ゆっくりでも下がり続けている」ならアウトガス、というのが一次切り分けです。
He リークテスト
リークの定量にはヘリウムリークディテクタ(質量分析計を He に同調させたもの)を使います。
- スプレー法(真空法): 装置を排気しながら外から He を吹きかけ、吸い込まれた He を検出。リーク箇所の特定が可能
- リークレートの単位は Pa·m³/s(1 Pa·m³/s = 10 mbar·L/s)
- 目安として、UHV 装置では 10⁻¹⁰ Pa·m³/s 台以下が合格ラインとされることが多い
He が使われる理由は、①大気中濃度が低い(バックグラウンドが小さい)、②分子が小さく軽いため微小な隙間でも速く流れる(ガス種の記事参照)、③不活性で安全、の 3 点です。