真空ポンプの種類と選定

動作圧力範囲と排気原理から見るポンプの使い分け

真空ポンプの種類と選定

どんなに配管設計が良くても、ポンプの選定が用途に合っていなければ目標圧力には到達しません。ここでは代表的な真空ポンプを動作圧力範囲と原理で整理します。

ポンプの2大分類

  • 気体輸送式(移送式): 気体を吸い込んで外へ排出する。連続運転可能(例:ロータリー、スクロール、ルーツ、ターボ分子ポンプ)
  • 気体溜め込み式(捕集式): 気体をポンプ内部に凝縮・吸着して閉じ込める。溜まったら再生が必要(例:クライオポンプ、イオンポンプ、ゲッターポンプ)

代表的なポンプの動作圧力範囲

ポンプ方式おおよその動作圧力域 [Pa]特徴
油回転ポンプ(RP)輸送10⁵ 〜 10⁻¹安価で堅牢。油蒸気の逆流に注意
スクロールポンプ輸送10⁵ 〜 10⁰ドライ(オイルフリー)。半導体・分析装置の粗引きの定番
ルーツポンプ輸送10³ 〜 10⁻¹大排気量。単独では使えず補助ポンプと組み合わせる
ターボ分子ポンプ(TMP)輸送10⁻¹ 〜 10⁻⁸高真空の主力。背圧(粗引き)ポンプが必須
クライオポンプ捕集10⁻¹ 〜 10⁻⁸大排気速度・清浄。定期的な再生が必要
スパッタイオンポンプ捕集10⁻⁴ 〜 10⁻⁹振動なし・UHV 向き。希ガスが苦手
NEG(非蒸発ゲッター)捕集10⁻⁴ 以下で併用H₂ に強い。加速器・UHV 装置で併用される

(数値は目安です。機種により大きく異なるため、必ずカタログ値を確認してください)

組み合わせの基本形

単独で大気圧から超高真空までカバーできるポンプは存在しないため、複数のポンプを段階的に使います。

  1. 粗引き(大気圧 → 数 Pa): スクロールまたはロータリーポンプ
  2. 本引き(数 Pa → 高真空): TMP またはクライオポンプに切り替え
  3. UHV 維持: イオンポンプ + NEG(振動・油汚染を嫌う場合)

TMP は背圧側の圧力が高いと動作できないため、粗引きポンプは TMP の運転中も背圧維持のために動き続けます(フォアライン)。

選定の観点

  • 到達圧力だけでなく排気速度カーブを見る — ポンプの排気速度は圧力によって変わります。プロセス圧力での実力値が重要です
  • ガス種との相性 — イオンポンプは Ar などの希ガスが苦手、クライオポンプは He を溜めにくい、TMP は軽いガス(H₂、He)で圧縮比が下がる、など
  • 油汚染の許容度 — 分析装置や成膜装置ではドライポンプ構成が前提になることが多い
  • 実効排気速度で評価する — カタログの排気速度ではなく、配管込みの実効値(実効排気速度の記事参照)で判断します

ポンプと配管はセットで設計するもの——配管のコンダクタンス計算には計算ツールをご利用ください。